芦津渓谷

鳥取県智頭町

 


智頭町町民環境会議

芦津渓谷・源流エコツーリズム

芦津渓谷の原生自然的環境

鳥取県智頭町芦津渓谷一帯は、東山(1,388m)を最高地点に標高1200〜1300mの山々が連なる東中国山地で最も山深い山岳源流域でり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落など自然性の高い植生域が広がる一方で、広い面積で人工林(スギ植林)として利用されている。
 
芦津渓谷は馬蹄形に連なる稜線に囲まれ、深い峡谷を成している。中国山地は浸食が進んだ老年期の山地である。芦津渓谷の峡谷域は、里山的要素の強い中国山地にあって、

原生自然的な要素が多くみられる秘境域であり、大自然が創りあげた渓谷と自然林の絶景がみられる。ここでは、連続する滝や渓畔林が美しい渓流の風景をなし、谷沿いにトチノキやミズナラ、カツラの巨樹も多くみられる。また、山地斜面には、天然スギとブナが混交する原生自然的な森林域が広がり、クマタカやヤマネなど絶滅のおそれがある希少な野生生物も多く生息しているとされている。

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渓畔林再生による「水と緑の回廊」づくり

渓畔林の風景的な価値や自然環境保全上での再評が高まりつつある。美しい渓流や巨樹が生育する渓畔林の環境は、エコツアーや源流トレッキングの舞台として人気が高く、水辺に接する落葉樹林は生物多様性を高め、多くの野鳥や小動物、水生生物にとって良好な生息環境となる。
 
多くの山村で人工林の荒廃が進行する中、全国各地で森林を再生しようという取り組み進められており、智頭町では慶所の荒廃林が住民や児童生徒の参加のもとに広葉樹林への再生が進められ、岡山県でも蒜山高原などでブナ林再生の活動が展開されている。このような源流域での森林再生活動をネットワークさせ、生物多様性が低下した谷川についても渓畔林の再生活動を進めることで、美しい渓流の風景を蘇らせ、山地における「水と緑の回廊」づくりを進めていきたい。
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渓流に沿って生育する落葉広葉樹は、美しい渓谷の風景を演出し、野生生物にとっても良好な生息の場を提供している。

今回の源流探訪は、人里離れ優れた自然の残る芦津渓谷をフィールドに、原生自然的環境の広がる原流森林域において望まれる自然保護と「山の観光」のあり方について考えてみた。

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山の観光とエコツーリズム

これまでの旅行といえば、団体が主流で、商業的なパッケージ旅行が中心であった。「マス・ツーリズム」とも呼ばれ、自然保護などの観点から問題点が指摘されてきたが、これに代るものとして「もうひとつの(オルタナティブ=Alternative)観光」が注目されつつある。オルタナティブ・ツーリズムとは、旅行者の数などは少なくても、地域交流の考え方を旅行に取り入れたもので、エコツーリズムやグリーン・ツーリズムなどがある。こうした動きは、サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)を目指す新しい流れとして、今後さらに増えていくものと考えられる。
 
原生自然的環境の広がる山地などでの観光については、環境倫理を身に付けたガイドによるエコツーリズムが推奨されている。エコツーリズムとは、「自然の生態系や歴史的文化的な遺産の保護と保全という活動に、観光という余暇活動が加わり、それにその環境を維持している地域への還元を伴う活動」と定義されている。


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山の観光とトレッキング

トレッキング[trekking]とは「山地を歩いて風景などを楽しむこと、山歩き」とされている(岩波書店の広辞苑)。トレッキングの本来の意味は、困難の伴うゆっくりとした旅行であるが、転じて、軽い山歩き、比較的長期間のハイキング、スキーの平地滑走などのような、主として健康とレクリエーションのための徒歩旅行をさす。ヒマラヤのトレッキングが有名である。登山との違いは、登頂を目的としないこと。気楽にゆったりと山麓を歩き回りながら、自然を感じたり、土地の人々との触れ合いを楽しむのが醍醐味とされている。ここでいうトレッキングの概念をハイキングを含む歩く旅(あるいは観光)とし、山歩きだけでなく、里歩きや野道を歩いて地域の自然や歴史、生活文化を楽しむ旅をトレッキングと呼ぶことにする。
 
山の観光を考える上で、美しい渓流や渓畔林の風景を楽しむ源流トレッキングは有効な手段であり、山道や林道を活用した自然歩道や案内板など環境整備が求められている。

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渓畔林は環境観光資源

渓畔林(けいはんりん)とは、渓流沿いに繁茂する森林のことをいう。湿ったレキや砂質土という劣悪な生育環境から、山地の渓谷ではケヤキやサワグルミ、シオジ、トチノキなどが生育する。これら渓畔林をなす樹木は、一般に出水しやすい土地に生育することから、巨木になるまで成長することも多い。水辺に育つ渓畔林や河畔林は生態学的に重要な機能を持ち、水面を覆って日射を遮断するため、水温が低く維持され、低温を好む魚類が生息できるようになることや、葉や昆虫が河川に落ち、水生昆虫や魚類の餌となることに加え、倒木が河川の中の生物の生息環境を豊かにすることや、森林伐採や洪水で発生した土砂が河川に流れ込むのを防ぐとされている。
 
このような山地の清流沿いに育つ渓畔林は、美しい渓谷の風景をなし、渓畔林をなすトチノキやサワグルミ、カツラの巨木林の景観は圧巻であることから、「山の観光」を考える上で重要な景観資源でもある。

芦津渓谷では、美しい渓畔林が発達しており、トチノキ、カツラ、サワグルミ、シナノキ、オヒョウ、ハルニレ、ユクノキ、フサザクラなどの広葉樹に混じりミズナラの巨樹も渓流沿いに多くみられることから、巨樹巨木の調査を実施し、生態系や景観の保全上で重要なものについては保護をはかりたい。

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絶滅が危惧される野生生物

芦津渓谷一帯は、里山的環境要素の強い中国山地にあって、深い峡谷をなし、渓谷に続く山地一帯にはブナ・スギ天然林が広がる原生自然的な環境が広く残っていることから、変化に富んだ地形・植生をなし、生物多様性も高く、多くの野生生物の生息空間となっていると考えられる。東中国山地では、国定公園域を中心に豊かな自然環境が残されており、野生生物が多数生息しているとされている。一方、芦津渓およびその周辺山地では、中国自然歩道整備に係る自然環境調査がなされているが、この地域で見られる野草や樹木、昆虫について紹介した書籍は少なく、系統だった野生生物調査はあまりなされていない。
 
今後、芦津渓およびその周辺域における野生生物の保護を実施しいていくにあったては、四季を通じ継続的な野生生物調査が必要である。
 
また、生態系や野生生物の保護については、地球温暖化や外国での森林消滅などの影響も考えられることから、定点を定めた自然環境(生物)調査を実施し、希少野生生物の個別保護のみならず、地球環境的な視点からの保全も必要とされる。

人里離れ深い峡谷をなす芦津渓谷一帯は、ブナ・スギ天然林が広がり、多くの野生生物の生息空間となっている。東中国山地では、国定公園域を中心に豊かな自然環境が残されており、野生生物が多数生息しているとされている。一方、優れた自然が残り、希少な野生生物が多く生息しているとされているにもかかわらず、この地域で見られる野草や樹木、昆虫について紹介した書籍は少なく、系統だった野生生物調査はあまりなされていない。
 
今後、芦津渓谷のように良好な自然域が広がる山地において観光利用や野生生物の保護を実施しいていくにあったては、四季を通じ継続的な野生生物調査が必要である。
 
また、生態系や野生生物の保護については、地球温暖化や外国での森林消滅などの影響も考えられることから、定点観測的な自然環境(生物)調査を継続して実施し、希少野生生物の個別保護のみならず、地球環境的な視点からの保全も必要とされる。

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山地での自然再生活動と観光

ビオトープとはいわゆる生物の生息空間のことである。「有機的に結びついた動物群の生息空間、あるいは一時生息空間」という定義が一般的であり、これはドイツ語圏でよく使われている。例えば、ブナ林,中小河川,湿地,溜め池など物理・化学的な環境条件が類似しており、そこに生息する生物群集に特徴づけられる空間である。
 
山地の環境についてみると、ブナ原生林に代表される自然植生から管理不足で荒廃したスギ・ヒノキの人工林まで、広く山林に覆われているが、現在、多くの人工林が管理不足のため、山地が荒廃しつつあるとされている。
 
荒廃が進む山地に広葉樹林をビオトープとして復元(再生)させることは、生物多様性を高めることであり、野生動物の生息環境保全とあわせて、人にとっても保健保養性の高い林野の環境を再生させ、山地の自然公園活用をはかることにも通じる。このようなビオトープ復元活動や自然再生活動も「山の観光」における体験メニューとなる。

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芦津渓谷の環境保全

氷ノ山後山那岐山国定公園に属する芦津渓谷には、ブナ原生林や渓谷・滝など、素晴らしい自然が残り、奥地にはサンクチュアリー(聖域)と呼ぶべき巨樹の育つ秘境域が存在している。
 
智頭町では、氷ノ山後山那岐国定公園を中心に豊かな自然環境が残されており、芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、絶滅が危惧される野生生物が生息している。
 
対象地内は、稜線山腹域と渓谷域に分けられ、渓谷域一帯および稜線山腹域には広く落葉広葉樹林(ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落、ブナ・ミズナラ群落)が分布している。
 
芦津渓(北股川)を中心とする渓谷域には、深い峡谷と発達した自然林がみられ、ブナ・スギ天然林、トチナキやサワグルミからなる渓畔林、ブナやミズナラからなる落葉樹林が生物多様性を高めている。
 
また、渓谷域に続く稜線山腹域は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されている。
 
芦津渓は、この馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成しており、絶滅が危惧される野生生物も多く確認されていることから、「野生生物の保護」について環境配慮が必要である。
中国山地は浸食が進んだ老年期の山地であるが、芦津渓の峡谷域は、里山的要素の強い中国山地にあって、原生自然的な要素が多くみられる秘境域であり、大自然が創りあげた渓谷と自然林の絶景がみられ、連続する瀑布や巨樹がアクセントとなって印象的な渓谷景観をなしている。
 
このような芦津渓の渓谷景観、巨樹林の景観は、原生自然的な景観要素に乏しい中国、四国、近畿地方にあって珍しく、観光資源としても高く評価されることから、「自然景観・風景の保全」が必要とされる。

さらに、対象地(芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山一帯)は、東中国山地にあって、岡山県、兵庫県との県境近くにあり、広く氷ノ山後山那岐国定公園に含まれている。そして対象地内を縦断するように中国自然歩道が通っており、雄大な峡谷やブナ・スギ原生林のロケーションを背景にトレッキングやエコツーリズムのフィールドや環境学習の場としての利用を考えるに適した場所ということになる。
 
加えて芦津渓の下流部には、智頭町を代表する観光拠点の「みたき園」があり、年間多くの観光行楽客が訪れていることから、峡谷域を含む「林野域の自然公園活用」が望まれる空間でもある。

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野生生物の保護

対象地一帯は、里山的環境要素の強い中国山地にあって、深い峡谷をなし、渓谷に続く山地一帯にはブナ・スギ天然林が広がる原生自然的な環境が広く残っていることから、変化に富んだ地形・植生をなし、生物多様性も高く、多くの野生生物の生息空間となっていると考えられる。
 
動植物調査の実施、生物多様性の保全、希少野生生物の保護の3つを自然環境配慮方針の一つである野生生物の保護における施策としてその内容を検討した。

動植物調査の実施
 
智頭町では、国定公園域を中心に豊かな自然環境が残されており、野生生物が多数生息しているとされている。一方、芦津渓およびその周辺域(芦津渓〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山)では、中国自然歩道整備に係る自然環境調査がなされているが、この地域で見られる野草や樹木、昆虫について紹介した書籍は少なく、系統だった野生生物調査はなされていないと考えられる。
 
今後、芦津渓およびその周辺域における野生生物の保護を実施しいていくにあったては、四季を通じ継続的な野生生物調査が必要である。
 
これまで鳥取県東部および智頭町において生息が確認されている野生生物種から推定すると、芦津渓谷やそれに連続する樹林域では、絶滅が危惧される野生生物の生育生息の可能性が考えられる。
 
さらに、自然遷移や地球温暖化の影響による植生の変化も考えられることから、定点を定めた自然環境(生物)調査を実施し、希少野生生物の個別保護のみならず、生態系としての保全が必要である。
 
あわせて、巨樹巨木の調査を実施し、生態系保全上あるいは景観保全上で重要なものについては保護をはかる。

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巨樹巨木

芦津渓谷では、発達した渓畔林がみられ、トチノキ、サワグルミ、カツラ、ミズメ、ケヤキ、ミズナラなど大径木が育っている。また、鳴滝山の自然林では、ブナや天然スギの大木が多くみられ、巨樹林を形成していることから、芦津渓および近接域について巨樹の分布調査を実施し、巨樹の保護保全のための方策を検討する。

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生物多様性の保全

芦津渓およびその周辺域(芦津渓〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山)では、国定公園域を中心に豊かな自然環境が残されており、芦津渓谷の発達した渓畔林(トチノキ、カツラ、サワグルミ、ケヤキ、ミズナラ、シナノキ、ユクノキなどからなる)をはじめ、鳴滝山の山腹から東山にかけての稜線にはブナ・スギ天然林が広く分布し、多様な環境が存在している。
 
芦津渓谷についてみれば、トチノキやカツラの巨樹が育つ二つの滝谷の渓谷林が目を引く。山地斜面は山林となっており、植林地とパッチワークを形成する落葉樹林が生物多様性を高めている。
 
植林地(スギ植林)は、それだけを見れば、植生自然度は低く、野生生物の繁殖に適さない空間であるが、間伐などよく管理された植林地は、下草が育ち、小型の野鳥や小動物、昆虫の生息環境となっている。

芦津渓およびその周辺域における野生生物の保護を考える上で、植林が進んだ沖ノ山の位置づけは重要であり、渓流に沿った渓畔林や落葉広葉樹林を含む生物多様性に富んだ環境を維持することで、絶滅が危惧される種や希少野生生物の保護およびその生息環境の保全とあわせて、芦津渓から沖ノ山でみられる地域固有の生態系の保護保全をはかる。

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稜線山腹域での生物多様性の保全

鳴滝山から東山、沖ノ山と連なる山地の稜線山腹域は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されている。
  芦津渓谷は、この馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成しており、ここでは、稜線山腹域について生物多様性の保全方策を検討した。

@自然林・二次林の保全
ブナ・スギ天然林を含む自然林については聖域的に保全するとともに、ミズナラやシデが育つ二次林(落葉広葉樹林)についても保全をはかり、自然遷移による極相林への復元をはかる。

>A広葉樹林の再生
 
伐採跡地については、一帯がブナ・ミズナラの林へと遷移するよう自然植生の復元をはかる。とくに、芦津渓谷の上流の伐採跡地や沖ノ山の伐採地については、谷筋部分についてトチノキ渓畔林の再生をはかるとともに、ブナ・スギ天然林と谷筋の渓畔林が連続するよう広葉樹林帯を育成させる。

B人工林の手入れ管理
 
植林地(スギ植林)は、それだけを見れば、植生自然度は低く、野生生物の繁殖に適さない空間であるが、間伐などよく管理された植林地は、下草が育ち、小型の野鳥や小動物、昆虫の生息環境となっていることから、人工林の手入れ管理を行う。

C針広混交林の育成
 
谷筋などで、スギが植栽され、単調になった人工林で、植林管理が困難な場所については、トチノキ、アワブキ、ケヤキを植栽し、針葉樹・広葉樹混交林の育成をはかる。

D草原環境の再生
 
伐採跡地などで平坦面を形成している山腹斜面の一部については、ウスイロヒョウモンモドキ、フサヒゲルリカミキリなど草原棲昆虫の生息環境となる、オミナエシやカノコソウの育つ二次草原(ススキ草原)の環境を再生させる。

希少野生生物の保護
 
これまで鳥取県東部および智頭町において生息が確認されている野生生物種から推定すると、芦津渓の渓谷域やそれに連続する森林域では、絶滅が危惧される生物種や希少種の生育生息の可能性が考えられることから、生物調査の結果を踏まえ、芦津渓谷一帯に生息環境を確保する。

1)希少な植物の保護
 
「レッドデータブックとっとり」などの文献資料によれば、芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、絶滅が危惧される植物が複数生育しているとされており、これら希少植物およびその生育環境の保護と保全をはかる。

@ブナ帯に育つ希少植物の保護

鳴滝山およびその周辺域ではブナ・スギ天然林が広く分布し、ブナ帯に育つ植物種が多種生育しており、絶滅が危惧される植物も生育している。これら希少植物が生育するブナ林の環境保全と再生をはかる。

A草原に育つ希少植物の保護
 
かつて中国山地には広く二次草原(ススキ草原)の分布がみられた。二次草原は、火入れや採草、放牧によって維持されてきた環境であるが、現在、全国的に急激にその面積が縮小しており、二次草原に育つキキョウ、アザミ類などが絶滅に危機にあるとされていることから、傾斜が緩やかな伐採跡地などに二次草原の再生維持をはかる。

B湿生植物群落の保護
 
芦津渓谷上流には、かつて湿地帯が形成されていたと考えられることから、湿生植物群落の生育可能性を精査するとともに、平坦な谷部や沢筋などに湿生植物が生育可能な湿地の再生をはかる。

2)希少な鳥類の保護
 
豊かな森林域がみられる芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、クマタカやイヌワシをはじめ絶滅が危惧される野鳥も多種生息しており、渓谷に発達する樹林を保全再生するなど、野鳥の生息環境を確保する。

3)希少な小動物の保護
 
芦津渓谷〜鳴滝山〜東山にかけての山地では、絶滅が危惧される哺乳類、両生・爬虫類も多種生息しており、渓流沿いに発達した渓畔林や広葉樹林を保全するなど、小動物の生息環境を確保する。

利用制限の実施
 
野生生物の保護を考える場合、多くの人が自然域(野生生物の生息域)に入ることによって、ワシタカ類など警戒感の強い野生生物への影響が懸念される。
 
また、行楽客のゴミや焚き火、自動車の通行は、野鳥や小動物に少なからず影響を与えていると考えられる。
 
さらには心無い入山者にとる希少な野生生物の採取も予想される。
 
これらについては、自然保護条例など法令による規制が必要であり、これを運用するにあたっては監視組織も必要となる。
 
現在、芦津渓谷では、ハンキング客や釣り客などの入山利用がある程度で、マナーも守られており、自然保護上での著しい問題は発生していない。

今後、芦津渓の人気が高まり、入山者が多くなれば、交通渋滞を含め、さまざまな問題も発生すると考えられることから、
 
当面は、自主的な環境パトロールを定期的に実施していく中で、必要に応じて、条例等による利用規制を検討していくこととする。

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自然景観・風景の保全

芦津渓(北股川)を中心とする渓谷域には、深い峡谷と発達した自然林がみられ、ブナ・スギ天然林、トチナキやサワグルミからなる渓畔林、ブナやミズナラからなる落葉樹林が生物多様性を高めている。
 
また、芦津渓谷一帯は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されており、芦津渓は馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成している。

中国山地は浸食が進んだ老年期の山地であるが、芦津渓の峡谷域は、里山的要素の強い中国山地にあって、原生自然的な要素が多くみられる秘境域であり、大自然が創りあげた渓谷と自然林の絶景がみられ、連続する瀑布や巨樹がアクセントとなって印象的な渓谷景観をなしている。
 
このような芦津渓の渓谷景観、巨樹林の景観は、原生自然的な景観要素に乏しい中国、四国、近畿地方にあって珍しく、観光資源としても高く評価される。
 
加えて、沖ノ山スギで有名な沖ノ山の一帯には、よく管理されたスギの美林がみられ、智頭町特有の山林景観をみせている。
 
地域景観の保全、良好な景観の形成の2つを自然環境配慮方針の一つである自然景観・風景の保全における施策としてその内容を検討した。

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林野域の自然公園活用

芦津渓谷一帯は、東中国山地にあって、岡山県、兵庫県との県境近くにあり、広く氷ノ山後山那岐国定公園に含まれている。そして対象地内を縦断するように中国自然歩道が通っている。
 
渓谷の対岸(右岸)は自然歩道など整備されていないが、比較的渓流に近づきやすい場所も多い。また、その背後は深い森林域となっており、トチノキやカツラの巨樹が複数の育つ渓谷も存在する。加えて、芦津渓谷の上流には、かつて湿地帯が形成されていたと思える平坦な地形が広がり、伐採跡地となっている。ここでは比較的眺望も開け、高原的な雰囲気の空間であることから園地整備も可能と考えられる。
 
このように、芦津渓谷一帯は、雄大な峡谷やブナ・スギ原生林のロケーションを背景にトレッキングやエコツーリズムのフィールドや環境学習の場としての利用を考えるに適した場所ということになる。
 
現在、芦津渓谷には、芦津地区より上流には民家はなく、「みたき園」のほかには、ほとんど観光施設はみられないが、今後、トレッキングへの関心が高まり、都市と農村との共生・対流が促進される中、芦津渓谷一帯の自然公園活用に期待が高まっている。
 
芦津渓谷一帯は、自然公園(氷ノ山後山那岐山国定公園)に指定されており、自然環境の保全および活用が望まれることから、環境配慮方針の一つである林野域の自然公園活用をはかるため、対象地の自然状況および景観特性を考慮して土地利用ゾーニングを行い、環境再生整備を検討した。

(1)土地利用ゾーニング
 
芦津渓谷一帯は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されている。
 
芦津渓(北股川)は、この馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成しており、切り立った断崖絶壁の環境もみられる。
 
対象地は、山林(自然林と人工林)やササ草原の広がる稜線域と、深い峡谷をなす渓谷域、比較的緩やかな傾斜面からなる高原域からなる。ここでは、自然公園活用をはかるため、対象地を渓谷ゾーン、稜線ゾーン、高原ゾーンに区分し、そのれぞれのゾーンについて、環境再生整備方策を検討した。

渓谷ゾーンの自然公園活用

深い峡谷をなす渓谷ゾーンでは、渓畔林の保全再生、巨樹の保護・育成、ネイチャートレイルの整備をはかる。

@渓畔林の保全再生
 
渓流に沿って、渓畔林を保全再生することで、渓流にみられる生態系を保全するとともに、渓流畔の安定性の確保、清流景観の保全をはかる。
 
保全再生すべき環境は、トチノキやサワグルミ、ミズキ、カツラ、ニナノキなどの巨樹が育つ渓畔林である。保護・誘引すべき生物種として、アカショウウビン、ヤマセミ、オオサンショウウオが考えられる。

A巨樹の保護・育成
 
谷筋に発達する渓谷林や渓畔林には、トチノキやサワグルミ、ミズキ、カツラ、シナノキ、イヌシデ、ミズナラなどの大木が育っている。また、ブナ・スギ天然林は渓谷斜面にまでみられることから、大径木の分布調査結果を踏まえ、巨樹の保存・育成をはかる。

Bネイチャートレイルの整備
芦津渓の左岸斜面には、中国自然歩道が設けられている。渓谷の対岸(右岸)は自然歩道など整備されていないが、比較的渓流に近づきやすい場所も多い。また、その背後は深い森林域(ブナ・スギ天然林)となっており、トチノキやカツラの巨樹が複数の育つ渓谷も存在する。
 
丸太橋などを渡し、対岸に歩いて渡れるようにするとともに、谷筋や渓流畔の一部にはネイチャートレイル(自然歩道)を整備し、渓流域での自然観察、渓畔林・巨樹の観察、自然散策ができるよう、休憩舎や野鳥観察舎、自然解説板を設ける。

2)高原ゾーンの自然公園活用
比較的緩やかな傾斜面からなる高原ゾーンでは、湿原ビオトープの形成、自然林の再生、落葉樹林帯の育成、二次草原の復元、風景を楽しむ園地の整備、トレッキングルートの整備をはかる。

@湿原ビオトープの形成
 
かつて湿地が形成されていたとされる平坦な谷筋については、野生生物調査の結果を踏まえ、保護すべき生物種を特定し、湿地や池沼などの止水環境を形成させることで、ビオトープ空間として整備保全する。
 
保全再生すべき環境としては、モリアオガエル、カスミサンショウウオ、渓流棲のサンショウウオが産卵する池沼や沢湿地、緩渓流が考えられる。谷の上部で流れの緩やかな部分については湿生植物群落の再生を検討する。

A自然林の再生
 
自然性が低下した伐採跡地や人工林の一部を落葉広葉樹林(ブナ林やミズナラ林)に再生する。また、渓流に沿った湿潤の場所についてはトチノキ渓畔林やヤナギ湿生林の環境を復元し、保健保養性を高める。

B疎林環境の復元
 
自然性が低下した伐採跡地の一部についてカラマツ防風林やミズナラやトチノキ、カエデ類からなる樹林帯を育成するなど、疎林的な環境を再生し、生物多様性を高めるとともに、風景的な演出をはかる。

C二次草原の復元
 
緩やかなな傾斜の伐採跡地については、一部にビオトープとなる二次草原(ススキ野原)の環境を復元し、、ウスイロヒョウモンモドキなど絶滅が危惧される草原の生き物が棲息できる空間を確保する。

D風景を楽しむ園地の整備
 
視界の開けた平坦地については、林野域の一角に自然や景色を楽しむ園地(休憩園地、展望園地、ピクニック園地)を設け、行楽客や来訪者が休憩できるようにする。

Eトレッキングルートの整備

中国自然歩道とは別に、山の眺望や風景のよいコースを選定し、ネイチャートレイル(自然歩道)を整備するとともに、山小屋や非難小屋を設ける。
 
ネイチャートレイルは、中国自然歩道や東山の登山道に接続させ、中国山地の山歩きができるようにし、トレッキングエリアの形成をはかる。

>2)稜線ゾーンの自然公園活用

山林(自然林と人工林)やササ草原の広がる稜線ゾーンでは、ブナ・スギ天然林の聖域保全、落葉広葉樹林の保全再生、自然観察登山道の整備をはかる。

>@ブナ・スギ天然林の聖域保全
 
ブナやスギの大木が育ち原生自然的空間をなすブナ・スギ天然林については、一部、自然観察路を設け、巨樹林が見学できるようにする。

A落葉広葉樹林の保全再生
 
自然性が低下した伐採跡地や人工林の一部を落葉広葉樹林(ブナ林やミズナラ林)に再生する。

B自然観察登山道の整備
 
智頭町の最高峰である東山(標高1,388m)は、現在登山道がササに覆われ歩いて登れない状態にあることから、ブナ・スギ天然林やササ草原を巡る自然観察登山道や、鳴滝山への縦走路を整備するとともに、沖ノ山や東山など東中国山地の自然を紹介した自然解説板・案内板を設け、登山道を中国自然歩道と接続させることによって、山岳トレッキングルートの形成をはかる。

3)ビオトープの復元
 
ビオトープとはいわゆる生物の生息空間のことである。生命:バイオbioと、場所:トポスtoposの合成語である。ビオトープBiotop(独), biotope(英・仏)と書くが「有機的に結びついた動物群の生息空間,あるいは一時生息空間(1)」という定義が一般的であり,これはドイツ語圏でよく使われている。例えば,ブナ林,中小河川,湿地,溜め池など物理・化学的な環境条件が類似しており,そこに生息する生物群集に特徴づけられる空間である。
 
ビオトープを復元(再生)させることは、野生動物を保護することであるが、自然観察や生態観察園などとして活用することで、林野域の自然公園活用をはかることにも通じる。

@草原ビオトープの再生
 
緩やかなな傾斜の伐採跡地の一部については、ビオトープとなる二次草原の環境を復元し、オミナエシやカノコソウの混生するススキ草原を再生することで、ウスイロヒョウモンモドキなど絶滅が危惧される草原の生き物が棲息できる空間を確保する。
 
二次草原は、火入れや採草、放牧によって維持されてきた環境であるが、現在、全国的に急激にその面積が縮小しており、草原に生きるウスイロヒョウモンモドキなどの蝶が絶滅に危機に瀕してことから、伐採跡地のほかに、人工林の林縁部などに、山野草の育つ野草帯を設け、ビオトープとしてススキ草原を再生させる。

A渓流ビオトープの保全再生
 
芦津渓(北股川)に注ぐ支流渓流において、谷筋の人工林に手を加え、渓畔林を再生させることで、渓流ビオトープとしての環境を保全再生し、オオサンショウウオ、ブチサンショウウオ、ムカシトンボ、ムカシヤンマなど渓流に生息する希少な生物の生息環境の保全をはかる。

B湿原ビオトープの再生
 
芦津渓谷の上流には、かつて湿地が形成されていたとされる平坦な地形がみられるが、ここでは伐採跡地や人工林を湿原の環境に復元する。
 
ここでは、野生生物調査の結果を踏まえ、保護すべき生物種を特定し、湿地や池沼、緩渓流、湿生樹林などの水辺環境を復元させることで、風景を明るくするとともに、自然観察域としての環境を整備する。
 
保全再生すべき環境としては、モリアオガエル、カスミサンショウウオ、渓流棲のサンショウウオが産卵する池沼や沢湿地、緩渓流が考えられる。谷の上部で流れの緩やかな部分については湿生植物群落の再生を検討する。

C自然林ビオトープの保全再生
 
芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地では、絶滅が危惧される哺乳類、両生・爬虫類も多種生息しており、ブナやスギ、トチノキ、カツラなどの巨樹の育つ自然林(ブナ・スギ天然林、トチノキ渓畔林)を保全するなど、希少な野生生物が生息する樹林環境を保全する。
 
あわせて、渓流に沿った人工林(スギ植林)や荒廃した人工林については、ブナ林やトチノキ渓畔林、ミズナラ林などの落葉広葉樹林に復元し、ヤマネ、モモンガ、ムササビ、サンコウチョウなど広葉樹林に生息する希少な小動物の生息環境を保全する。

I田舎暮らし・農村観光

山里を訪ねる観光

「山の観光」を考える場合、芦津渓谷のような人里離れた秘境域を巡るエコツーリズムも魅力であるが、そのような大自然の有する山地の麓には、静かな山里の風景が開け、山間を流れる清流の環境が見られることも多い。これまで、そのような山里の環境は観光の対象とはされなかったが、古き良き時代の懐かしい日本の原風景が失われゆく中、山里の自然や景観、歴史、生活文化が観光資源として着目されつつある。都会での生活に飽き、静かな山村での「田舎暮らし」に憧れる都市生活者の少なくない。

しかし、その山里も過疎高齢化が進行し、荒廃の道をたどりつつあるとされ、農山村の活性化が求められている。ある意味で山里は都市と農村との交流の舞台であり、グリーンツーリズムのフィールドでもあることから「山の観光」を考える上で興味深い地域であるが、そこは人の生活の場であり、これらオルタナティブ・ツーリズムに対応すべき観光プログラムや仕組みづくりが求められている。

山の自然や風景を楽しむ旅
 
エコツーリズムやグリーン・ツーリズムなどのオルタナティブ・ツーリズム増加にみられるように、旅や観光のスタイルが団体観光から少人数旅行に推移する中、旅なれた人も多くなり、写真撮影などを目的に一人で山村や美しい自然域を訪ねる個人旅行もその需要が高まることも考えられる。
 
自然や風景について国民それぞれが自分の趣味や感性に応じた楽しみ方をみにつけてくると、新しい観光文化や環境倫理も生まれてくる。観光に対する個人の考え方もそれぞれによってかわってくる。そうなれば、専門ガイドを必要としないエコツーリズムが普及することや、あるいは、山里や山地で出会う住民や別の旅人が来訪者の質問に答える形で、にわかガイドになってその土地の自然や生活文化について説明する観光交流の形ができることも考えられる。そのためにも温もりのある山里の自然と風景を大切にし、新しい「山の観光」のスタイルを求めていきたい。

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